
『重衡』浅見真州
(平成28年11月5日「浅見真州の会」国立能楽堂 撮影=髙橋健)
故 浅見真州追善公演
第16回 日経能楽鑑賞会
能「重衡」・狂言「無布施経」
能では金剛流二十六世宗家・金剛永謹と観世流シテ方・片山九郎右衛門が『重衡』を、狂言では和泉流の野村萬、野村万作が『無布施経』をそれぞれ競演します。
2022年6月9日(木)、15日(水)午後6時開演国立能楽堂
『重衡』浅見真州
(平成28年11月5日「浅見真州の会」国立能楽堂 撮影=髙橋健)
概要
現代一流の能楽師が一堂に会し、名曲・大曲を披露する日経能楽鑑賞会。16回目となる今回は、第1回から出演を続けるなど、同鑑賞会を支え、令和3年7月13日に惜しまれつつ80歳で世を去ったシテ方観世流の浅見真州師の追善公演として開催します。
『重衡』は南都焼き討ちを行った平重衡が、父・清盛の命令と神仏への信仰の間で苦しむ様を、死後の霊に語らせる修羅能で、長い間上演されていませんでしたが、昭和58年(1983年)に浅見師によって復曲されました。復曲・新作・実験的上演に極めて積極的に取り組んだ浅見師の功績を偲び、代表的な復曲である『重衡』を、観世流の片山九郎右衛門師、金剛流二十六世金剛永謹宗家が競演します。金剛流として初演となる金剛永謹宗家の『重衡』にもご注目ください。狂言では共に人間国宝の野村萬・野村万作兄弟が『無布施経』を競演します。
室町時代に生まれ、激動の時代を乗り越えてきた日本文化の精髄、能楽。確固たる技術と情趣豊かな表現力を持つ、まさに現代日本の最高峰の能楽師による至芸にご期待ください。
浅見真州(あさみ・まさくに)
1941年生まれ。四歳の時に『雲雀山』の子方で初舞台を踏み、幼少期は父の指導を受けるも、今なお不世出の名手とうたわれる故観世寿夫の強い影響を受け、愛弟子として薫陶を受ける。1957年、16歳の時に『敦盛』にて初シテを勤める。「復曲」では、異色の修羅能『重衡』、「道成寺」の原曲『鐘巻』、『常陸帯』、『綾鼓』ほかを上演。異流競演としては、喜多流・友枝昭世との『舞車』がさきがけとなった。奈良の興福寺中金堂再建に際し、15年間延べ30番の勧進能を奉納する。日経能楽鑑賞会は2007年の第1回『清経』から2020年の第14回『綾鼓』まで出演を続ける。2019年2月には日経能楽鑑賞会のパリ公演を開催しフランス政府より芸術文化勲章シュヴァリエを受章。2000年に観世寿夫記念法政大学能楽賞、2005年に芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、2011年に旭日小綬章、2013年に日本芸術院賞。
2021年、7月13日没。享年80。
2022年6月9日(木) 狂言「無布施経」野村萬、能「重衡」片山九郎右衛門
午後6時開演
2022年6月15日(水) 狂言「無布施経」野村万作、能「重衡」金剛永謹
午後6時開演
国立能楽堂
渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
ホームページはこちら各日S席 10,000円 A席 8,000円 B席 7,000円 C席 6,000円
2公演セット券S席 19,000円 A席 15,000円 B席 13,000円 C席 11,000円
日経公演事務局03-5227-4227(平日10:00-18:00)
※チケットは全席指定・税込です。
※2公演セット券は、S・A・B席各36セット、C席は10セット限定。いずれも日経公演事務局のみで取り扱います。
※未就学児童のご入場はお断りします。
※やむを得ない事情により出演者などが変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
※今後のコロナ禍の影響により公演の開催に変更が生じる場合がございます。ご来場前にホームページをご確認ください。
番組
6月9日(木)午後6時開演
狂言(和泉流)
無布施経
シテ(僧) | 野村 萬 |
---|---|
アド(施主) | 野村 万之丞 |
後見 | 野村 拳之介 |
能(観世流)
重衡
シテ(平重衡) | 片山 九郎右衛門 | |
---|---|---|
ワキ(旅僧) | 宝生 欣哉 | |
アイ(奈良坂辺の男) | 野村 万蔵 | |
笛 | 杉 市和 | |
小鼓 | 成田 達志 | |
大鼓 | 國川 純 | |
後見 | 観世 銕之丞 青木 道喜 小早川 修 |
|
地謡 | 小早川 泰輝 坂井 音雅 武田 友志 浅見 慈一 |
観世 淳夫 馬野 正基 浅井 文義 浦田 保親 |
6月15日(水)6時開演
狂言(和泉流)
無布施経
シテ(僧) | 野村 万作 |
---|---|
アド(施主) | 石田 幸雄 |
後見 | 月崎 晴夫 |
能(金剛流)
重衡
シテ(平重衡) | 金剛 永謹 | |
---|---|---|
ワキ(旅僧) | 殿田 謙吉 | |
アイ(奈良坂辺の男) | 高野 和憲 | |
笛 | 松田 弘之 | |
小鼓 | 曾和 正博 | |
大鼓 | 柿原 弘和 | |
後見 | 廣田 幸稔 廣田 泰能 豊嶋 幸洋 |
|
地謡 | 元吉 正巳 宇髙 徳成 宇髙 竜成 惣明 貞助 |
坂本 立津朗 金剛 龍謹 松野 恭憲 豊嶋 晃嗣 |
あらすじ
狂言「無布施経」
毎月決まって、とある檀家へ祈祷にやってくる僧。無事に勤めをすませ、施主に別れを告げるも、今日に限ってお布施が出てこない。これが前例となっては困ると、僧は再三戻ってきては、雑談や説法に事寄せて催促するのだが、施主は一向に気づく様子がない。僧は最後に苦肉の策を思いついて…。
能「重衡」
諸国一見の旅の僧が京都から奈良へやってくる。奈良坂にある桜の木の下で、一人の老人に出会う。旅の僧はこの坂から見える奈良の仏閣の壮麗さに驚き、寺々の名を尋ねる。老人は、東大寺大仏殿、西大寺、法華寺、そして興福寺などと教えていく。旅の僧が別れを告げて立ち去ろうとした時、「しばらく。回向をなしてお通りなさい」と老人に呼び止められる。僧は「誰のための回向か」と尋ねると、一の谷で源氏に捕らえられ、木津川で斬首にあった平重衡のことと答え、自らが重衡の化身であることを暗示して、卒都婆の蔭に消える。やがて夜になり、盛りの桜の花の陰から重衡の亡霊が「修羅道の責めに苦しんでいますが、今、法の声に引かれて、この奈良坂に帰って参りました」と姿を現わす。そして悪逆の罪によって修羅道の苦しみを受けていることを訴え、回向を頼んで消え去る。
出演者
金剛流二十六世宗家 金剛永謹(こんごう・ひさのり)
1951年、二十五世宗家金剛巌の長男として京都に生まれる。重要無形文化財総合指定保持者。幼少より、父・金剛巌に師事。1998年9月、能楽金剛流二十六世宗家を継承する。2003年5月、金剛能楽堂を京都御所の西向かいに移転、竣工。古くは法隆寺の坂戸座に由来し、長年培われてきた伝統と山紫水明の自然の中で育まれてきた金剛流は、能楽シテ方五流の中で唯一関西を本拠地とする。「舞金剛」と呼ばれる華麗で躍動感溢れる独特の芸風に、「京金剛」といわれる優美で雅やかさが加わった芸風を特徴とする。金剛流第1回の海外公演であるカナダ・アメリカ公演団長を皮切りに、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、ロシアなどでの海外公演も多数行う。京都市芸術新人賞、京都府文化賞新人賞、京都府文化賞功労賞受賞。京都市文化功労者表彰。第67回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2018年紫綬褒章受章。公益財団法人金剛能楽堂財団理事長。一般社団法人日本能楽会会長。一般社団法人金剛会会長。京都市立芸術大学客員教授。著書に『金剛家の面』、『金剛宗家の能面と能装束』がある。
片山九郎右衛門(かたやま・くろうえもん)
能楽シテ方観世流。1964年、片山幽雪(九世片山九郎右衛門・人間国宝)の長男として京都市に生まれる。祖母は京舞井上流四世家元井上八千代(人間国宝)、姉は五世家元井上八千代(人間国宝)。父及び八世観世銕之亟(人間国宝)に師事。1970年「岩船」で初シテ。父とともに片山定期能楽会を主宰。全国各地で多数の公演に出演する他、ヨーロッパ、アメリカでの海外公演にも積極的に参加。また、学校公演及び学校における能楽教室の開催、能を題材にした『能の絵本』の制作(「天狗の恩がえし」等)、能舞台のCG化、能楽公演のインターネット動画配信など、若年層のための能楽の普及活動も手掛ける。京都府文化賞奨励賞、京都市芸術新人賞、文化庁芸術祭新人賞、日本伝統文化振興財団賞、京都府文化賞功労賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞を受賞。公益社団法人京都観世会会長、公益財団法人片山家能楽・京舞保存財団理事長。2011年1月、十世片山九郎右衛門を襲名。重要無形文化財(総合指定)保持者。
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